みちばた日誌

いまをぼちぼち生きる。

はすぬま温泉の話。

病院の待合室でたまたま手に取って、おもしろかったのでメルカリでポチッた本があります。『NHK趣味どきっ! 銭湯 ボクが見つけた至福の空間』という雑誌です。テレビの放送と連動している「NHKテキスト」というシリーズのもので、全8回の放送内容をフルカラーで収録してくれています。

 

気になる内容はというと、東京のとある銭湯の一日のタイムスケジュールから始まり、銭湯ビギナーさん向けの銭湯での心得、健康によいお風呂の入り方の解説に、大学教授による江戸時代の銭湯事情などなど、銭湯に関するさまざまな情報がわかりやすく、コンパクトにまとまっていてとても読みやすいです。

 

さて、その雑誌の最後の方に、大田区にある「はすぬま温泉」という銭湯のご主人のインタビューが載っていました。この記事に目を通していたとき、「ん?なんだか見覚えがあるような・・・?」とぼんやり既視感を覚え、記事に添えられた写真をよく見てみました。そしてそこが昨年東京を訪れた際に立ち寄った銭湯だったことに気づいたのでした。

 

昨年の夏、私は神奈川在住の友人宅にお邪魔していました。そのとき温泉好きの私に友人が「この辺の銭湯は温泉が湧いてるんだよ」と教えてくれて、実際に銭湯へ連れて行ってくれたのでした。温泉と聞いて楽しみにしていた私は、そこで少々驚きの体験をすることとなります。

 

意気揚々と浴室に入った私が見たのは・・・なんとコーラのように黒く濁ったお湯でした!

後に簡単に調べたところ、東京、神奈川、千葉の一部では「黒湯」と呼ばれる温泉が湧いているとのことで。お湯の黒さは海藻などの成分が溶け出したもので、その見た目とは対照的に、やわらかい肌触りのとても気持ちがいいお湯なのでした。そのお湯にすっかり魅了されてしまった私は、都会での遊びもそこそこに、2日間で3軒の銭湯を回ることになるのです。笑

 

その黒湯巡りの最後に訪れたのが、記事にも取り上げられていた「はすぬま温泉」だったのです。東京観光の最終日で、友人と別れてから一人でぶらぶらしているときにたどり着いた銭湯でした。慣れない土地と人の多さに少し疲れていた私にとって、この銭湯で過ごした時間はまさに「至福」のものでした。

 

浴場にある大きな滝の絵が素敵で、浴槽も広々としていてとにかく気持ちがいい。冷たすぎない水風呂は、くだんの黒湯をかけ流したものであるとのことで、熱めの浴槽と水風呂を行ったり来たりして結局1時間以上も一人でお湯に浸かっていたのでした。

 

帰りがけ、フロントで販売されていたオリジナル缶バッジを買いました。牛乳瓶のフタをイメージしたこのバッジが、またいい味を出していて買わざるをえなかったんですよ 笑 これは今も一番よく使うサコッシュにつけて、いつも持ち歩いています。

 

コロナ騒ぎで関東に足を延ばせるのは、まだしばらく先になりそうです。行けないとなると余計に恋しくなるのが人情というもの。しかしここはグッとこらえて、いまはあの黒いお湯に想いを馳せながら、また手元の雑誌を眺めることにいたします。