みちばた日誌

いまをぼちぼち生きる。

3本のポテト、の話。

先日当たった宝くじを元手においしいものを食べることにしました。モスバーガーです。身近にありながら庶民がおいそれと立ち入ることのできないお店、それがモスバーガー(個人の感想です)。

 

普段なら注文するのは原点にして頂点、王道中の王道「モスバーガー」一択なのですが、今回の私は一味ちがうのです。なぜなら宝くじで得た1200円があるから。モスのアプリでクーポンを確認し、「とびきりチーズ」なるハンバーグが大層ジューシーそうなやつをチョイス。そしてさらにポテトのLセット。普段は懐とお腹周りを気にしてSにするところですが、今日はそんなのお構い無し。なぜならアブク銭があるから!

 

そんなわけで注文を終え、お気に入りの角スペースの二人がけ席(広々使えて一目にもつきにくい)を抑えることにも成功し、私の勝利は約束されたように思えました。料理に先んじて到着した「瀬戸内産ネーブル&レモン ジンジャーエール」も甘さ控えめで自分好みでしたし、まさに天にも昇る気持ちといったところ。

 

そして事件は起きました。

料理を運んできた店員のお姉さんが、バーガーとポテトのトレイをテーブルに置いたときでした。置いた拍子に3本のポテトが袋からこぼれ落ち、トレイの外のテーブルに落下したのです。

 

一瞬の静寂。そののち、お姉さんの「…あっ、申し訳ありません!」の声とともに、お姉さんはすばやく落ちたポテトを回収していきました。「ごゆっくりどうぞ」と。

 

刹那の出来事にこちらは一言も発せぬままでしたが、お姉さんが立ち去ってから回収されてしまった3本のポテトの映像が頭から離れなくなりました。そして小さく心が呟くのです。

「あれは…あれは…俺が食べるはずのポテトだったはずなのに…」と。

 

それからの私はまるで魂を抜かれたかのように虚ろな目をしていたと思います。3本のポテトが落ちた場所には食塩の粒が散らばっており、あの出来事が現実のことであると物語っていました。

 

お姉さんの対応は基本的には正しいのです。トレイならともかく、テーブルに落ちてしまった食べ物をお客さんに出すのは大変失礼なことです。ゆえにそれを拾い上げ、バックヤードへ引き上げていったのでしょう。

 

しかし一方で、こちらはお金を出して買ったポテトを目の前で取りあげられてしまったのです。それも3本のうち2本は私の人差し指くらいの長さの「当たりのポテト」だったにもかかわらず。机の引き出しから出てくる死にかけの消しゴムみたいなやつではなく、食べごたえ抜群だったであろう「当たりのポテト」だったのです!

 

お姉さんの「申し訳ありません」のタイミングで声をかけるべきだったか?

「あ!大丈夫ですよ!床に落ちたわけでもないし、そのポテトも食べますから袋に戻してください」と佐藤健ばりの爽やかさでいえばあるいは…。

 

しかしそれもどうか。お姉さんに意地汚いと思われるのではないだろうか?そもそもやっぱり衛生的な問題で結局は持っていかれていたのではないだろうか?というか俺のなかに佐藤健のエッセンスを見出だすことは可能なのか?グギギ…憎いよぉ…全く関係のない佐藤健が憎いぃ…

 

お姉さんが去ったあとしばらく本気で「きっと替えのポテトを持ってきてくれるはず…モスバーガーはそういう配慮のできる子だから…」と考え、そわそわしながら待っていた私。しかし待てど暮らせどそんなものが届く様子はなし。冷静に考えればそりゃそうだろうと思うものの、ポテトを3本やられた直後の私にそういった冷静さがあるはずもなく。

 

食事を終えた私に残ったのは拭いきれないモヤモヤとした気持ちでした。お店に入ったときのあの全能感はどこへやら。たった3本のポテトに心を蝕まれ、心ここに非ずのままお店をあとにすること。この気持ちはどう扱えばいいの…?

 

モスバーガーにひとつ、因縁ができた話でございました。味は最高でした、悔しいけど。笑